まきのとおる物語

ドラマチックに憧れるしがないサラリーマンの青春ストーリー

第6話「たんなる思いつき?」

「楽しく……」

 

「勉強……」

 

社会人になって毎日心身共につらい日々を送っている。ここで外国語の学習もつらいとなってしまうと、間違いなくサボってしまい、元のぐうだら生活に逆戻りだ。少しでも楽しいと思える学習方法を考えている真っ最中である。

 

「楽しく……勉強……」

 

「楽しい……勉強……」

 

「楽しい……楽しい……」

 

「う〜ん……」

 

「…………」

 

「んー、楽しいってそもそもなんなんだ!」

 

自分にとっての「楽しい」とは一体全体何だろう? 今までの人生でどのようなことに楽しさを見いだして来たのか考える自分。

 

「なんかこう……感動すること?」

 

わりと早く答えが出た気がする。それは勉強でもなんでもいいが、そこに「感動」があるとやっぱり楽しさが増すのではということだ。

 

恥ずかしい話、実は大学に入る前に一年間大学浪人をしている私である。予備校に入り一年間勉強していたのだが、その予備校の授業は本当に感動したのを今でも鮮明に覚えている。講師が授業で繰り出す話のなんともおもしろいことおもしろいこと。今まで高校の授業でしか勉強をしていなかった自分にとっては本当に圧巻の毎日だった。

 

少し話が逸れてしまったが、とにかく学習に「感動」を入れること。これをまず考えることが大事かと。とりあえずペンを持ち、「感動」という文字をノートの空いているスペースに書いておく。

 

机に向かって勉強することそのものは感動になるかといえばそうじゃなく、その結果として現れる「英検◯級」取ったとか、「TOEIC ◯◯◯点」取ったという結果がそのまま感動になると思う。

 

しかし、今回の僕の場合そういった試験に受かるという類いが理想の自分に近づけるというわけではない。

 

「資格とかを取るのではなく、海外の人とかと気兼ねなく話せるような感じになりたいんだよなぁ……」

 

まだ言葉にするのは難しいが、おそらくコミュニケーションに重点を置きたいのだろう。

 

それも、日本人にありがちな受け身のコミュニケーションではなく、もっと自発的にしょうもない話とかで外国人と盛り上がれるようなコミュニケーションを望んでいる。

 

「これが出来たら普通にうれしい!」

 

そりゃ、うれしいはずだ。かなりの語学レベルがないとそこまでは到達しない。仮にそのようになることをゴールと設定して、どのような勉強方法があるか、まずどのような感動を求めて学習するか?

 

「『わーぉ! 自分、結構話せてるじゃん!』 っていう感動かな?」

 

おそらく現段階の自分は『外国語を話せている』ということに感動してしまう気がする。

 

例えば、今の僕だとアメリカ人に「How are you?(調子はどうですか?)」と言われて「I’m fine.(元気です。)」で会話が終了してしまう。しかしながら、肝心なのはこの後で、この後の話の展開を日本人の友達と話しているのと同じ感覚で、「最近仕事はどうよ?」とか「そういえばさ、この間のテレビ番組見た?」と展開させることが出来たら、わりかし『話せている』という感動を実感出来ると思うのである。

 

「そういえば、この間友達と会ったとき何の話をしたっけか……?」

 

つい最近、大学生時代の友達と久々に飲みに行ったときの話を思い出す。

 

「よっ!」という挨拶から始まり、話した話題は「最近仕事の調子どう?」「結婚とか考えてる?」「あいつは今何やってるんだろう?」「最近かわいい芸能人は?」など、どうでも良い話で盛り上がって結局三時間ぐらい居酒屋で盛り上がった。

 

親しい友人なら大体いつもこんな話で盛り上がる。

 

「あれ?」

 

ここで一つの疑問が頭の中で浮かび上がる。

 

「自分の会話の展開って、そういえばいつも同じ感じじゃない?」

 

さっきの飲み会の場合だと「挨拶」から始まって、「近況報告」「恋の話」「世間話」「別れの挨拶」の順で終わっている。もちろん例外もあるが、この展開は日本人の友達とコミュニケーションする上で誰にでも当てはまる。

 

「…………」

 

「このコミュニケーションの展開を学べばいいんじゃない?」

 

まず、人との会話のコミュニケーションの展開をどのように行っているか。これをしっかり理解した後、いつも日本語で話している内容や似たような話題を英語で勉強すればいいと思ったのである。

 

単語帳の例文、例えば「this is a pen」というフレーズのように、いつ使うか分からないものから勉強しないで、自分に起こった身近な話題から始める。そうすれば、同じ話題を英語に置き換えるだけで同じ話題で外国人とも話せてしまうというわけだ。

 

そうなってくると、次に考えることは自分は普段どのような話をしているのか。それについてをより深く考える必要があるが、

 

その前に、ペンを持ちノートの開いているスペースに「コミュニケーションの展開を学ぶ」とだけ書いてまた少しばかり休憩する。