まきのとおる物語

ドラマチックに憧れるしがないサラリーマンの青春ストーリー

第7話「大変そうだけど……」

一息つき、

 

次に考えたことは自分の普段の会話ではどのようなことが話されているかということ。

 

朝の「おはようございます」から始まって、夜の「お休みなさい」で終わる二十四時間の間で自分はどのようなことを話しているのか。

 

そして、「親しい友達」と話す話題や「初対面の人」と話す話題、はたまた「恋人」とデートで話す話題とはどういうものがあるのかいろいろ妄想してみる。

 

今、自身が妄想している場面で話されている言葉の全てを日本語から英語に変換出来ればもう英語を話せると自信を持って言える。

 

最初は、その場面の全てをノートにまとめようと思ったけれども、なんせ言葉というのは限りのない世界。

 

「キリがないな……」

 

あまりに途方のない作業で時間がかかると思い、まずは友人と会ったときにどのような会話の展開をするか、それについてまとめてみる。

 

 

 

<僕が友達と話すときの会話の展開ってこんな感じ!>

 

①会ったとき:「よっ!」って感じの軽い挨拶をします。

 

②会話の最初の方:「最近調子どう?」などの簡単な心境報告とかします。

 

③会話の中盤その1:「仕事がなかなかうまくいかなくて……」という仕事の話だったり。

 

④会話の中盤その2:「恋人と最近別れたんだ、泣きたい……」という恋愛相談だったり。

 

⑤会話の中盤その3:「最近太ってきたからジム通ってるんだ」という趣味や体験談などの話だったり。

 

⑥会話の終盤:「あの番組見た? おもしろかったよねー」という近頃テレビ番組などの世間話とか。

 

⑦別れるとき:「またねっ!」という別れの挨拶でバイバイ。

 

 

 

「うん、大体こんな感じかな」

 

ここまでまとめてペンを持つ手がとまる。

 

「問題は、この後か……」

 

友達と話すときの展開は分かったが、当然のことながらこれだけじゃ外国人と話せない。ここからいつも自分が話している内容とか言葉の言い回しを日本語から英語にしていく作業をしなければならない。果たして、どうやってやるか……。

 

「なんか、台本的なものを作っていくしかないような気がするけど」

 

「自分が『こんなことを話したい』と思うようなドラマの台本みたいなものを作っていくしか……」

 

考えたのは、まず自分が話す内容や言い回しそのままをまず日本語で文字に起こす。そして、次にそれら一つ一つを翻訳していって、最終的には英語で書かれた自分専用の自分が話したい内容が書いてある台本を作成するということだ。

 

「これは……めちゃくちゃ大変でしょ!」

 

この前、友達と居酒屋で飲んでいた時間は約三時間、その間ずっとしゃべりっぱなし。その話した内容を文字に起こすだけでも骨の折れる作業になることは間違いないのに……。

 

「さらにそれを、英語に訳すなんて!!」

 

「さすがにムリでしょ〜」

 

弱音を吐く自分。想像するからに大変な作業だから仕方のない気もするが、現時点では外国人と英語で話せる一番の近道なのではないかと思われ。

 

「どうしよ……」

 

どうします?

 

「うーん……」

 

「一回だけやってみるかぁ」

 

ということで、自分専用の台本を作ることにチャレンジしてみることにした。ペンを持ち、ノートに『自分専用の台本を作ろう!』と書き、少しノートを眺めたあと静かに閉じる。

 

「疲れたな。帰るとしますか」

 

もう冷たくなってしまっている残りのカフェラテを一気に飲み干し、喫茶店を出る。外はもう陽が傾きかけ、気温も下がっている。

 

「うわっ、さむ〜!」

 

「鍋でも食べたいなぁ」

 

とは思いつつも、この日もいつもと同じようにコンビニで弁当とビールだけ買って帰宅した。